「鰯(イワシ)は弱い?」日本人のネーミングセンスの秘密に迫る

漢字の成り立ちには意味があります。主な分類として発音から成り立つ『形声文字』やその物の見た目を文字記号化した『象形文字』などです。つまり、漢字には何らかの意味がつけられているのです。

鰯といえば『魚へん』に『弱』と書いて『いわし』と読みます。『弱』と書いても『いわし』とは読まないので、別の意味を持った漢字ということが分かりますよね。

確かに鰯は小さい魚ですから見た目にも弱そうな魚です。実際に、外圧に対して非常に弱い魚ですから陸に上げるとすぐに死んでしまいます。こうした特徴を見た漁師たちが「弱し(よわし)」と呼ぶようになったという説があります。つまり、弱しが変化して「鰯(いわし)」と呼ばれたという説です。

鰯(イワシ)は7回洗えば鯛(タイ)になるのか?

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鰯は生臭い魚ですから、魚が苦手な人にとっては少し抵抗のある魚かもしれません。しかし、7回洗えば鯛(タイ)のように食べられることから、ことわざとして「イワシ七度洗えばタイの味」という言葉が生まれました。

脂が乗っている時期ほど、鰯の鮮度は急速に落ちていきます。水揚げされた瞬間から鰯は傷んでいくので、保管や流通方法が発達していなかった時代には生臭くて食べにくい魚という印象もありました。刺身にするよりも焼き魚やつみれなど、何らかの加工をして食べるという方法が好まれました。

しかし、鮮度の良い鰯は脂も乗っており非常に美味しい魚です。事実、鰯は鮮度が落ちないように氷水でしっかり洗うことで美味しく食べられます。近年は特に新鮮な状態で食卓に届ける技術が発達したために、新鮮な鰯を全国各地で食べられます。

鰯は良質な刺身として美味しく食べられる時代になりました。むしろ、高級魚として認知されつつあります。つまり、現在では鯛のように立派な魚として食卓に並ぶ存在ですね。

しらす、ちりめんはどちらも鰯(イワシ)の稚魚

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しらすやちりめんを食べた事のある方は多いでしょう。呼び名は変わりますがどちらも鰯の稚魚です。地域や時期によって変わりますが、基本的には『かたくちいわし』の稚魚で、春先が旬の魚です。

水揚げしたらすぐに死んでしまうという鰯の特性から、生しらすとなると漁港から近い地域でなければ食べることは難しいと思います。しかし、多くの地域で茹で上げした『釜揚げしらす』や、干した『ちりめん』を食べることができます。

『しらす』と『ちりめん』の使い分けですが、生の状態、あるいは、茹でたり干してすぐの状態だったりする稚魚は『しらす』と呼びます。ある程度固くなるまで干し続けたものを『ちりめん』と呼びます。

鰯(イワシ)の養殖は実現できるのか?

1998年、TAC(漁獲可能量)に関する規制が行われました。鰯(マイワシ)をはじめとした7魚種に関して資源保護や管理の観点から決められた漁獲量を上回ってはいけないという法律ができています。

しかし、美味しい鰯を求めている人も少なくないはずです。また、様々な魚の養殖に鰯が餌として使われることもあり、資源としての需要は非常に高いのです。事実、鰯の価格は年々高騰しており、かつてのような「大衆向けの安い魚」という認識は覆されてしまいましたね。

そこで「資源保護をしながら鰯の漁獲量を高めるためには、養殖をすれば良いのではないか」と疑問に感じる方も多いのです。しかし、結論から述べると鰯の養殖は不可能です。

なぜなら、鰯は回遊性の魚だからです。たとえば、回遊性の魚の代表としてマグロが思い浮かびますが、マグロの養殖は難しい問題でした。マグロと同じように鰯もエサを求めて世界中を旅しています。つまり、かつてマグロが養殖できなかったように鰯を養殖することは非常に難しいのです。

なお現在ではマグロの養殖に成功しているのですが、これは日本が高級魚としてマグロを認知しているためです。鰯はどうしてもブランドを構築することが難しく、養殖する難易度に対して採算が合わないと考えられているのです。したがって、今後も鰯は漁獲するという手法が中心となりそうです。

(photo by 田中十洋, Miya.m, NOAA FishWatch)

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