ネコ科のトラの話
トラは世界最大のネコ科の動物です。その仕草や顔つきからもよく猫を連想させますよね。ある動物園では、トラにマタタビを与えたところ、猫のように気持ちよさそうにしていたそうです。
しかし、多くのネコ科動物の共通点である「水浴びを嫌う」ということに関しては、トラは違います。動物園でもトラの檻にはよく小さな池が作られていますが、トラは基本的に水浴びが好きです。気温の高いアジア南部の湿原や森林に生息しているトラは、暑い体を冷やすために水浴びをします。狩りの前に自分の匂いを消すために水浴びをすることもあるそうです。
また、同じネコ科であるライオンとの面白い話があります。なんと、トラとライオンのハーフが生まれることがあるのだそうです。オスがライオンなら「ライガー」、トラなら「タイゴン」。人工飼育のもとに限ったことで、野生では見られないのだそうですが、不思議な感じがしますね。
意外なところに現れるトラ
トラは英語でtigerですよね。この語源は、「速い」を意味する古いペルシャの言葉tigrisだと言われています。tigrisと聞いて思いだされるのが、メソポタミア文明の礎となったティグリス川。流れが速いことからこの名前になったそうですが、トラとティグリス川の語源が同じだなんて驚きですね。
また、日本では、昔話の始まりといえば「昔々、あるところに…」です。これが韓国では、「虎がタバコを吸っていたころ…」という決まり文句で始まるそうです。韓国での虎は、古くから信仰の対象となっている霊獣です。虎は特別親しみのある動物なのかもしれません。そして、トラは鬼のパンツにも使われています。
これは、鬼門を十二支に当てはめると丑寅に当たることから、鬼が牛と虎の特徴を持つとされたのが転じたとされています。鬼は牛の角と虎の牙を持ち、更にパンツも虎の皮を使っている。パンツの柄にも意味はあったのですね。
昔話のトラ
「虎は千里行って千里戻る」という言葉があります。虎が1日にそれほどの距離を走れるということから、優れた行動力や勢いの良さを表します。また、巣穴に残した子どもを思って千里の道も帰るという親心を意味することもあります。この言葉は、戦時中に女性たちが兵士として発つ男性たちに渡した「千人針」の由来になりました。効果を高めるために、虎の絵柄の布を用いたり、寅年生まれの女性には年の数だけ縫ってもらったりしたそうです。
また、この言葉の「戻る」ということから、寅の日は金運、旅行運が良いとされています。その代わり、婚礼や葬儀にはあまり向いていないようです。新しい財布をおろすには寅の日がいいというのも、トラの黄金色からの連想と共に、この言葉が元となったと言われています。
(Photo by J. Patrick Fischer, Eric Kilby)